2022.10.05
中国のビール業界レポート
中国のお酒と言えば「白酒」や「青島ビール」が有名ですが、現在中国では若者達を中心に「クラフトビール」の人気が高まっています。本記事では、中国における「クラフトビール業界」を取り上げ、成長の過程や中国でのクラフトビールのマーケティングにおけるポイントなどをご紹介します。中国におけるクラフトビールやアルコール商材のマーケティングについて興味のある方は是非ご一読下さい。
若者を中心にクラフトビールの人気が拡大
興業証券の調査報告書によると、中国におけるクラフトビールの主要消費者層は、1990年代生まれと2000年代生まれを中心に移行しており、 若年化の傾向が現れています。個性的な味わいを持つクラフトビールは、新鮮な味や香りを求める若者のニーズに合致しており、高い人気を集めています。
クラフトビール業界の成長
・ブームの始まり
ニッチ分野に分類されるクラフトビールは、2013年頃から資本家に注目されるようになり、急速に発展しました。醸造所や、バーやパブが各地へ大幅に増加し、また独立系のクラフトビールトップメーカーは、チェーン展開を開始します。独立系メーカーが事業を拡大する一方、ビール業界におけるトップメーカーは、ホワイトビールを始めとするクラフトビールを発売しました。これによりクラフトビールはポピュラーなチャネルに登場するようになりました。
・企業間の競争が激化していく
クラフトビールが有名なチャネルに並ぶようになったことで、独立系企業は複数の資金調達を達成、大手企業は市場のシェアを拡大していきました。元々ビールの愛飲者に好まれていたクラフトビールは、商業化やブランド化が行われ急速に発展、業界内の競争も加速していきました。商工統計によると、クラフトビール関連企業登録件数は、2016年から2021年12月までに2,278件増加しており、年々拡大しています。
・大手と中小企業の競争
大手企業は規模や資金力、生産能力が高いため、ニッチなクラフトブランドが知名度などにおいて遅れを取ってしまう事が多いです。このような環境においては、しっかりとマーケティング戦略を練り実行していく事が重要です。次項ではクラフトビールブランドが中国でマーケティングを行う際押えるべきポイントをまとめてご紹介します。
中国クラフトビール業界におけるマーケティング・ポイントとは
①ポジショニング:差別化戦略を立て実施する、的確にブランドの位置づけを行う
他ブランドとの差別化ポイントを見つけ、的確なポジショニングを行いましょう。市場内での影響力を高めていく事を意識しながら、中国消費者の欲求にこたえる様な新しい事に挑戦しマーケティング活動を着実に行う事がチャンスに繋がります。
②プロモーション:商品の歴史や発展など、文化的背景を消費者に伝える
クラフトビールのプロモーションで重要なことは、オフラインチャネルでのプロモーションと、商品の発展の歴史を伝える事の2点です。特に歴史に関する発信は、他の飲料系商材と比べクラフトビール商材において効果的で重要です。商品のロイヤリティや、消費者のリピート率を向上させる可能性が高く、定期的に購入してくれる”ファン”の獲得に繋がります。新規顧客の開拓も大切ですが、ファンを獲得する為のプロモーションはなにより重要な部分です。
③販売チャネル:複数のチャネルで販売を展開する
コロナウィルスの流行をきっかけに消費場面の多くがオフラインからオンラインへと移行し、ブランドにとってオンライン・マーケティングは重要な手段となりました。しかしアルコール商材に限って、未だオフラインチャネルは無視できない存在です。オン・オフライン両方のシェアを増加させる為にはオフラインでの口コミを活性化させる事を意識しながらプロモーション施策を実施していく事が大切です。
また、クラフトビールの販売チャネルは多様化が進んでいます。ある独立系クラフトビールメーカーは、自社チャネルから、レストランや小売店などの主流な販売チャネルへと進出した後、より流通し易いボトルビールを主流とした商品展開に舵を切りました。複数の手段を組み合わせ、自社ブランドに適した販路を開拓する企業が今後も増えていくでしょう。
④安定した品質の維持
ビールは絶妙な風味を持ち、また変質しやすい商品です。ほとんどのビールは、出荷直後の風味が一番良いとされており、それ以降はビールが劣化していきます。その為、輸送距離が長くなればなるほど品質を維持する事が困難になります。クラフトビールにおける品質とは、ビールの色合い、香り、風味、テクスチャーなどによって測定されます。これらの測定項目は、消費者がクラフトビールに対し期待している要素でもあるため、品質を保つことは、消費者のブランドに対するロイヤリティを高める事に繋がります。
⑤味へのイノベーション
食品を購入する際の決め手は、品質そして味わいや食感です。総合化学企業で中国にもオフィスがあるDSM社が世界20ヵ国以上でクラフトビールバイヤー3,300人を対象に行った業界調査では、消費者の約75%が(価格を含む様々な選択肢の中で)クラフトビールを購入する際の一番の決め手に特定のフレーバーと回答し、クラフトビール愛飲者の81%が新しいビールの種類やフレーバーを味わう事を楽しみにしていると報告されています。フレーバーは重要な要素として考えられ、醸造所も継続的に開発を行っています。
今後の発展
・これからの課題
クラフトビールは注目されているカテゴリーである一方で、高めのアルコール度数や原麦汁濃度、強めの苦みなどを敬遠する消費者が一定数存在する事や、原材料のコストが通常のビールの3~5倍で高価格である事などによって、消費量が制限されている一面もあります。調査統計によると、2020年の中国クラフトビール消費量は82万9,000キロリットルでした。これはビール消費量全体の1.9%程であり、他のビール市場と比較すると、まだまだこれから伸びていく市場であると言えます。
現在、中国ではクラフトビールバーが増えており、レストランなどでもクラフトビールを提供する様になりました。食事の際にクラフトビールを飲むという消費者も増えており、今後様々な発展・革新の可能性が予想されています。
まとめ
全国的にクラフトビールのブームが起きており、中国も例外ではありません。特にZ世代と呼ばれる若者を中心にトレンドとなっており、クラフトビールを飲む場面が多く見られるようになりました。また、他の市場の消費量を見ても、中国の消費量はまだこれから伸びていく事が期待されており、今後も注目したい市場のひとつです。他の飲料系商材とはマーケティング・ポイントが異なる為、本記事で御紹介した5つのポイントが参考になれば幸いです。
ポリスターでは中国ビジネスにおけるコンサルティングサポートを行っております。中国市場について興味がある、詳しく知りたい方は是非一度お問い合わせください。参入前後のリスク管理アドバイスや、マーケティングアドバイスなど幅広くサポート致します。
また、販路開拓サポートも行っております。オンラインに限らずオフラインの販路開拓もサポートしておりますので、クラフトビールの様にオン・オフラインでの展開を行いたい企業様は是非ご相談ください。
今後もポリスターでは、中国進出をする企業様のために尽力いたします。