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2021.09.06

2021年度インスタント食品における中国若者消費傾向調査レポート

 

本記事では、中国のインスタント食品における市場動向や若者を中心にした消費者のトレンドについて分析・ご紹介します。中国の食文化や、地域による味覚の違いについても触れています。中国市場に興味のある食品メーカー様、中国市場に進出する日本メーカー様の一助となる情報であれば幸いです。

 

 

インスタント食品市場の消費状況

 ・インスタント食品市場の成長動向

インスタント食品の市場規模は着実に拡大を続けており、2020年上半期、中国のインスタント食品製造企業は営業収益・総利益を好調に伸ばしています。市場の成長を促した要因はオンラインチャネルです。オンラインにおけるインスタント食品市場は、他の食品市場と比較しても、消費量・消費者層・消費頻度・単価のいずれにおいても高い成長率を実現しています。

 

 

・新しいブランドと商品カテゴリーの増加

インスタント食品市場には、直近1年で新進気鋭のブランドが続々と参入しています。商材カテゴリーも多岐に渡り、従来のカテゴリーであるインスタントラーメン・ご飯・冷凍食品に加え、シリアルや穀物のとろみ剤、複合調味料(※1)、惣菜・半調理品、注文商品引換券(※2)等、商材は増え続け市場規模は拡大を続けています。

 

※1…複合調味料 : 即席スープ/スープの素/火鍋の素/カレールー/出汁 などが挙げられる。

※2…商品引換券 : オンラインで購入出来る電子チケット。これを持って実店舗へ商品を受け取りに行く。

本記事の3項「インスタント食品の販売モデル「引き換え商品券(電子チケット)」が消費を促す」で詳しく紹介しています。

 

 

インスタント食品市場の消費者層分析

 ・主な消費者層は若者を中心に構成される

現在インスタント食品の主な消費者は女性ですが、客単価は男性消費者の方が高い傾向にあります。85後世代、90後世代、Z世代は他の消費者層と比較し消費量が多く、消費力の中核を担っています。中でもZ世代は、他世代と比べて客単価の上昇に余地があると考えられています。

 

 

・都市ごとに見る消費動向

昨年と比較すると、全ての都市ランクでインスタント食品の平均消費単価が上昇しており、中でもランク2の都市は消費シェアを占めています。インスタント食品に対する需要は、都市ランクによって異なります。都市ランク1、2の消費者は、低脂肪・低糖質・低カロリーのインスタント食品を好む傾向にあり、特に都市ランク1の消費者達にとって低カロリーの商品には大きな需要があります。

 

 

・ライフスタイルによって変化する消費シーン

 既婚者は、インスタント食品消費における主力ターゲットです。アウトドアや家族用の消費シーンに惹かれて購入する消費者が多く、他の消費者と比較すると客単価が高い傾向にあります。一方独身者は、主に寮生活や夜食の消費シーンに惹かれやすい傾向にあります。消費者のライフステージによって、インスタント食品の消費シーンや訴求ポイントは異なり、それぞれに応じた商品を購入します。

 

 

インスタント食品のトレンド

・郷土料理のインスタント化が人気

近年中国では、食品製造技術の革新が進んでおり、郷土料理のインスタント食品開発が盛んに行われています。オンラインのインスタント食品市場では、郷土料理カテゴリーの商品消費量が急速に増えており、特に広西省の郷土料理「螺螄粉(※1)」は圧倒的な消費量を誇る人気商材です。他にも「鸭血粉丝(※2)」や「江西米粉」などの郷土料理が急速に人気を集めています。

 

※1…鸭血粉丝南京市の郷土料理、アヒルの血の春雨スープ。

※2…螺螄粉 : 貝類をベースとしたヌードルスープ。

 

 

・郷土料理のインスタント食品における地域別消費傾向分析

インスタント食品の消費量を地域別で分析すると、1番が華東地区、続いて華南地区、華北地区となっています。「地域別消費傾向ランキング」によると、華東地区で人気の商材は小龍包(上海)と鸭血粉丝(南京市)、華南地区は江西米粉と車仔麺(香港)、華北地区は冷麺(東北地方)熱乾麺(武漢)、西南地区は重慶小麺(重慶市)と綿陽米粉(四川省)と、それぞれ故郷の味を代表するものがランクインしています。

 

 

・「家庭厨房式」と「半調理品」の人気が高まる

コロナウィルスの影響により「家庭厨房式(※)」と呼ばれるインスタント食品が、味の良さや調理の手軽さで人気を博しています。中でも人気のブランドは「拉面説」と「空刻」です。また、過熱などのひと手間を加えるだけで食べられる「半調理品」も、消費者の調理という体験価値を簡易に満たすものとして大きく成長しているカテゴリーの1つです。特に肉、魚、大豆カテゴリーの半調理品は成長速度が加速しています。

 

※…家庭厨房式:レストランの一品の様に、味・見た目のクオリティが高いインスタント食品。 

 

 

・様々なブランドが注目する「夜食シーン」における需要

新興ブランドも老舗ブランドも、インスタント食品の消費シーンに対する商品開発に積極的です。特に夜食というシーンにはどのブランドも注目しています。夜ふかしするユーザーはラーメン・春雨・米麺・螺螄粉・火鍋などのインスタント食品を好みます。また、夜食シーンでは辛いものや濃い味は敬遠されており、甘酸っぱさ・胡麻ソース味・シーフード味の商材が人気です。

 

 

・新奇的な味付けが”ちまき”や”団子”カテゴリーにおいて注目されている

冷凍・真空包装のちまきや団子の商材は、従来の味付けから脱却し、新奇的な味の商材が登場し始めています。ちまきカテゴリーでは、螺螄粉・ドリアン・臭豆腐・植物肉(人工肉)等これまでには珍しい食材を餡の素材として取り入れ、団子カテゴリーでは、チーズ・五仁(※)・卵黄などを餡の素材とした商品が市場で急増しており、消費規模も急成長しています。

 

※…五仁 : 数種類のナッツで作られた餡。

 

 

・ちまきの味付けトレンドで分かる南北による味覚の違い

ちまきの味付けの傾向から、地域による味の好みが表れています。中国北部のちまきは、こし餡やナツメ餡を始めとした甘い系の味付けが好まれており、一方南部のちまきは、卵黄や肉が含まれる餡など、塩・醤油系の味付けが好まれています。また、北部内陸の新疆やチベット地域では、甘い系のほか、シーフード系のちまきも好まれており、南部内陸では、臭豆腐・螺螄粉・ドリアン・植物肉などの新奇な味が好まれます。

 

 

・だんごの味付けトレンドで分かる南北による味覚の違い

団子の味付けにおいては、北部では伝統的なゴマやピーナッツの味が好まれており、南部では紫芋や栗などの味が好まれます。また北部では、ドリアンやチーズなどの新奇な味の団子が流行っており、南部では、ドリアンを含むストロベリーやブルーベリーといったフルーツ味の団子が人気です。

 

 

・新たな商品カテゴリー「自己発熱式食品」

近年インスタント食品市場は、味・パッケージ・マーケティングなどによる差別化競争が激しく、その過程で「自己発熱式ラーメン」や「自己発熱式麻辣烫(※)」といった商品が生まれました。これらの自己発熱式食品は、ライブ中継を取り入れた販売手法で注目されました。また、自己発熱式食品の代表的なブランドである「自嗨鍋」や「開小灶」は、3DのグリーンバックやVTuberを始めとする革新的な技術や文化を活用し、大きな成長を遂げました。

 

※…麻辣様々な火鍋の具材が入った四川麻辣風料理。

 

 

・トレンドワードである「ミールリプレイスメント」がインスタント食品にも影響を与えている

オンラインにおけるインスタント食品の消費者は、ミールリプレイスメント・低糖質・低脂肪・低カロリー等の食品に高い興味関心を寄せており、消費規模は拡大、関連キーワードによる検索数は近年増加傾向にあります。ミールリプレイスメントジャンルの中ではシリアルが主力商品です。代表的ブランドである「王飽飽」や「欧扎克」は、ダイエットをコンセプトにマーケティングを行う事で、ミールリプレイスメント商品売上ランキング上位にランクインしました。

 

 

・ヴィーガン向け食品として植物肉のインスタント食品が登場

インスタント食品市場におけるヴィーガン向け食品は、植物肉製品の登場により、餃子・ワンタン・お惣菜・麺類・餅・火鍋など幅広いジャンルをカバーしています。現在、植物肉を使用している人気食品ブランドは、半調理品、インスタントパスタなど様々な商品を販売しています。植物肉の商品は、ECプラットフォームのライブ配信でキャスターや芸能人が推薦する事により、益々人気を高めていきます。

 

 

・インスタント食品の販売モデル「引き換え商品券(電子チケット)」が消費を促す

現在、オンラインで商品券を注文し実店舗で商品を受け取るという”小売りモデル”が流行しており、ちまき商品券・インスタント食品商品券・冷凍食品商品券などの消費が増加しています。ちまき商品券は、主に端午節の前に購入される(※)ことが多くみられます。一方インスタント食品商品券は、夏休みシーズンが年間消費量のピークです。冷凍食品商品券は、基本中国春節期間の人気が最も高い傾向にあります。

 

※…端午節は中国四大伝統祝日の一つ。厄払いの願いを込めてちまきを食べる伝統がある。

 

 

まとめ

インスタント食品の消費分析により、中国の食品市場のトレンドや、地域別にみる味や商材の需要の変化、またヴィーガン向け食品やミールリプレイスメントなどが市場で需要を伸ばしている事から、若者の食への意識が変化している事が分かりました。

 

中国の食品市場で成功するには、その地域の味の好みや消費トレンドを始め、ターゲットとする中国消費者がどのようなライフスタイルで生活しているのか、どういった価値観を持って商品を購入するのかをイメージし、戦略を立てプロモーションやブランディング、チャネルの選択を行わなければなりません。

 

中国市場へ参入するには、市場ニーズを読み取る事や消費者に訴求するプロモーションを行うことに長けたパートナーを見つけ、綿密な戦略立案を持って行うことが成功への糸口です。

 

 

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