2021.08.19
中国化粧品市場、芸能人マーケティング最新レポート(後編)
中国市場では、KOLによるライブコマース等、芸能人を活用する宣伝手法が効果的な施策として盛んに行われています。中でも化粧品業界は、芸能人によるプロモーション効果が強く現れる業界です。本報告書では、”芸能人の広告起用マーケティング”について深く掘り下げ、3部に渡り、影響力・人気のある芸能人・宣伝手法など、細かに分析・紹介して行きます。
第3部となる本記事では、中国産ブランドが行っている芸能人起用マーケティングを取り上げ、中国本土におけるマーケティング手法についてお伝えします。
本報告書が、中国進出をする企業様方の一助になれば幸いです
第1部・第2部の記事は下記リンクよりご覧いただけます。
第1部 : https://www.polystar.yokohama/china/20210803/
第2部 : https://www.polystar.yokohama/china/20210810/
全編通して読むことで、中国化粧品業界における芸能人起用の効果やプロモーションとしての重要性、中国消費者の価値観が読み取れる内容となっております。是非ご一読下さい。
※化粧品市場:本調査における化粧品市場とは、国際ブランド、輸入品を含むスキンケア、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、男性用化粧品等を対象としている。
※芸能人の広告起用マーケティング:本文では、「芸能人起用」と略称する。
中国産化粧品ブランドの快進撃
中国産化粧品は消費者からの需要を伸ばし始めている
中国産化粧品の商品カテゴリー数は、2018年頃より急速に増え、2020年には海外化粧品ブランドを越えました。同年の注目の化粧品ランキングTOP100では、ランキングの37%が中国産ブランドの化粧品でした。
中国産ブランドのメイン消費者層と宣伝キーワード「芸能人愛用」「お手頃価格」
中国産ブランドの主な消費者を世代別で分析すると、95後世代※が多い事が分かりました。消費傾向としては100元以下の「お手頃価格」商品が売れ筋である一方、100~300元の「芸能人愛用」商品の販売数も年々伸びています。中国産ブランドも海外化粧品ブランドと同様に、芸能人愛用品と謳った宣伝が、この3年間で増加傾向にあります。
※95後世代 : 1995年以降に生まれた人の略称
中国産ブランドの芸能人起用傾向
世代別に見る芸能人の需要―00後世代及び中生代(※1)は中国産ブランドの新たな選択肢
海外化粧品ブランドと比較すると、中国産ブランドはより幅広い世代の芸能人を起用しています。海外ブランドは主に90後世代(※2)の芸能人を起用する傾向にある一方で、中国産ブランドは2021年第1四半期に00後世代(※3)の起用案件数が初めて90後世代芸能人の案件数を越えました。また、これまでみられなかった中生代である70後世代(※4)の芸能人起用案件も徐々に増えてきており、第1四半期にオファーがピークに達しています。
※1 …中生代 : 70後、80後世代を指す
※2 …90後世代 : 1990年以降に生まれた人の略称
※3 …00後世代 : 2000年以降に生まれた人の略称
※4 …70後世代 : 1970年以降に生まれた人の略称
老舗中国産ブランドの動向
歴史あるブランドはトレンドの芸能人起用で幅広い消費者層へリーチを狙う
中国の老舗化粧品ブランド「美肤宝」と「百雀羚」は、ブランドの認知度を高めるため、国民的知名度を持つ芸能人を起用していました。しかし、老舗ブランドとなった現在では、消費者層を広める為により若い芸能人やアイドルを起用する傾向がみられるようになりました。
「百雀羚」の”若者への販促”マーケティング施策実例
老舗中国産ブランド「百雀羚」は、芸能人起用において若者の興味・関心に合わせたマーケティング手法を編み出しました。
2019年10月に百雀羚は、古代中国風コスメティックブランドのイメージキャラクターに「張雲雷」を起用し、古代中国風のコマーシャルの作成、ファン向け限定ボックスを発売しました。また、プロモーションにゲーム性(※1)を取り入れるなど若者の興味を引くための多くの施策を行い、「百雀羚」は長期的な売上上昇を実現しました。
※1…百雀羚旗艦店で行われているライブ配信でキャスターと交流すると、有名動画サイト「bilibili(※2)」で張雲雷のアニメーションが閲覧出来るというもの
※2…bilibili : 中国で有名な動画配信サイト。位置づけとして、日本では中国版ニコニコ動画と称される事もある。
・中国の動画サイトに関する情報はこちらよりご覧いただけます。
進化し続ける、中国の動画配信 : https://www.polystar.yokohama/media/20200828/
新興中国産ブランドの動向
新興中国産化粧品ブランドの成長率は過去3年間で最高潮、成長への近道として”芸能人起用マーケティング”を挙げている
近年、新興中国産化粧品の消費規模が拡大を見せています。特に2020年頃には急拡大を見せ、その成長スピードは海外ブランドを含めた化粧品市場全体の成長速度よりも速いです。新興ブランドは、ブランドイメージを高めるためのマーケティングに芸能人を積極的に取り入れ知名度を拡大し、中国化粧品市場のシェアを更に獲得しています。
「国民的女神」と称される大物女優を通じ、ブランドの高級感を引き出す
新興中国産ブランドの化粧品は、手頃な価格帯の物が大半を占めており、価格以外でもブランド価値を高めていく事が今後の課題です。解決策として、国際的知名度を持つ大御所芸能人を起用することで高級感を引き出した上で、短期間で注目を集め、ブランド露出を最大限行う施策があります。この施策は、国内でのブランド知名度を上げつつ、海外市場の開拓の足掛かりにもなるような相乗効果の高い広告施策と考えられています。
芸能人起用後の施策例―コラボレーション商品で若者をターゲットに販促活動を行う
海外市場を開拓する一方、新興化粧品ブランドは”芸能人の若者ファンを消費者に取り込む”事に注力しています。メイクアップブランド「烙色」は、国民的人気ドラマ『有翡』と『長歌行』とコラボレーションした限定商品をプロデュースし、好調な売れ行きを実現しました。「人気芸能人×IP」というコラボレーションは、各ブランドが若者の注目を集めるための重要な一手となっています。
芸能人起用後の施策例ー限定ギフトボックスとファンサービス企画
広告起用の芸能人を選定した後、ブランドは当該芸能人のファンに訴求するための一連のファンサービス活動を企画します。多くのブランドはまず、芸能人の限定ギフトボックスをリリースします。その後、ファンが一定金額購入する度、当該芸能人の限定版販促物をプレゼントする企画を複数設けます。この一連の施策で売上向上と共に、ファンの忠誠心を高めることで、長期的な販促効果を得ています。
芸能人起用施策例―個性的なアプローチの実例
IPコラボ商品、限定版商品は現在主流の芸能人マーケティングですが、一部のマイナー化粧品ブランドの中では、新たなアプローチ手法も見られています。「赫丽尔斯」は「Mango TV※」とタイアップし、個性派女優・タレント・KOLを招き、”女性の心理”をテーマにしたインタビュー形式のショートドキュメンタリー作品『她有情绪又怎样』(訳:彼女はちょっと感情的だ。だったらなに?)を共同制作しました。この新たなアプローチは、作品を通して消費者へブランドの価値観や個性を伝える狙いがありました。
※Mango TV : 中国有数の大手動画サイト
まとめー化粧品ブランドの芸能人マーケティングにおける3要素
①影響力の拡大
・芸能人を長期的または短期的に広告へ起用し、異なる世代へリーチする。
・人気IPとコラボレーションし、特定の消費者を引き込む。
・オンライン・オフラインにおける交流イベントで、ファンとの関係性を強化する。
②ECプラットフォームでCVRを高める
・バーゲンセールのタイミングで、芸能人のファン限定サービスを行う。
・芸能人が店舗ライブの配信ルームで直接ファンと交流し、販売促進を行う。
・限定商品ボックスを発売し、芸能人のファンの購入意欲をかきたてる。
③ブランドの価値観を発信する
・ショート動画やマーケティング、情報発信コンテンツやSNSを使用し、ブランドの露出を高めながら知名度向上を図る。
・芸能人とKOLの力を借りてブランドを形成する。
・話題性のあるプロモーションイベントを企画し、世論を誘導、消費者にブランドを憶えてもらうきっかけを作り出す。
まとめ
本記事では、中国国産ブランドのマーケティングについてご紹介しましたが、第1部では中国市場における芸能人起用の概要、第2部では海外化粧品ブランドのマーケティングについてそれぞれ詳細に分析を行っております。是非全編を通して”中国国内の化粧品市場の動向”や、”中国市場におけるプロモーションの傾向”を掴んで頂けたら幸いです。
第1部 中国市場における芸能人起用の概要と動向 : https://www.polystar.yokohama/china/20210803/
第2部 中国市場へ進出した海外ブランドの芸能人起用マーケティング : https://www.polystar.yokohama/china/20210810/
経済成長著しい中国市場では、消費者のニーズを掴み製品の価値を的確に伝える事が重要です。ポリスターでは、中国現地スタッフによる市場調査に基づいた戦略立案をご提供しております。企業様のブランドイメージや商品価値を大切にし、日本スタッフ・中国スタッフが両国から、販路開拓・リスク管理・販促活動までトータルサポート致します。
本記事が、中国でのマーケティング戦略の一助となる情報であれば幸いです。