2021.08.10
中国化粧品市場、芸能人マーケティング最新レポート(中編)
中国市場では、KOLによるライブコマース等、芸能人を活用する宣伝手法が効果的な施策として盛んに行われています。中でも化粧品業界は、芸能人によるプロモーション効果が強く現れる業界です。本報告書では、”芸能人の広告起用マーケティング”について深く掘り下げ、3部に渡り、影響力・人気のある芸能人・宣伝手法など、細かに分析・紹介して行きます。
第2部となる本記事では、中国へ進出した海外ブランド達が行っている芸能人起用マーケティングを取り上げ、中国本土におけるマーケティング手法についてお伝えします。
本報告書が、中国進出をする企業様方の一助になれば幸いです
第1部の記事はこちらからご覧いただけます。
https://www.polystar.yokohama/china/20210803/
次回
https://www.polystar.yokohama/china/20210819/
※化粧品市場:本調査における化粧品市場とは、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ヘアケア化粧品、フレグランス化粧品、男性用化粧品等を対象としている。国際ブランド、輸入品を含む。
※芸能人の広告起用マーケティング:本文では、「芸能人起用」と略称する。
目次
海外化粧品ブランド全体の動向と芸能人起用における傾向
海外化粧品ブランドは中国化粧品業界の中で最もマーケティングに注力している
海外化粧品ブランドは、中国の化粧品市場の中で最もマーケティングに注力しています。2020年上半期、化粧品カテゴリーにおける「広告主の業界支出額Top10」にランクインしたブランドの80%は海外ブランドです。特に上位を占めている海外化粧品ブランドはL’Oreal、Estee Lauder、Lancômeの3ブランドです。
海外化粧品ブランドは、以前より芸能人の販売促進効果に頼る傾向にある
2019年頃からのTmallでは、”芸能人推薦”や”芸能人愛用品”などのタイトル付けがされている海外ブランド商品の数が増え続けており、一年後にはほぼ倍増しています。商品の価格帯から見ると、単価が100元以下の商品と500元以上の商品の売上が良く、低価格帯、高価格帯どちらも好調に売上を伸ばしています。
海外化粧品ブランドにおける芸能人起用時の人数傾向とその違い
①1人起用
1人の芸能人をブランドのイメージキャラクターとして起用し、全線商品※の宣伝を行います。
<代表的な起用実例>
CPB→蔡徐坤(中国市場におけるメイクアップ化粧品のブランドイメージキャラクターとして起用)
GUCCI→鹿晗(ブランドのイメージキャラクターとして起用)
②商品のシリーズに合わせ複数人の芸能人を並行起用する。
商品シリーズの特徴に合わせ、適切な人物を複数人起用します。この手法を使用するのは、主に豊富な商品ラインナップを持つ大手化粧品ブランドです。
<代表的な起用実例>
DIOR→楊穎(中国市場でのメイクアップ化粧品のイメージキャラクター)/黃景瑜(メンズフレグランスシリーズのイメージキャラクター)/王麗坤(「花秘瑰萃」シリーズのイメージキャラクター)/景甜(「肌活蕴能」シリーズのイメージキャラクター)
③商品数とトレンド性を重視し同時に複数人を起用する。
商品イメージとの合致よりも、流行に乗る事を重視し、旬の俳優やタレントを起用します。芸能人と長期的または短期的な契約を結びます。
<代表的な起用実例>
OLAY→ブランドイメージキャラクターに現在十数人に対して起用を行っている。
※全線商品…スキンケア商品、メイクアップ商品、フレグランス商品等を含む大きな一つのブランドラインの事
海外高級化粧品ブランドにおける芸能人起用への需要動向
大きな売上を誇る化粧品市場、高級化粧品ブランドは芸能人起用を急激に加速させる
中国の化粧品市場は、売上が拡大し続けており、ブランド同士が戦略を以て消費者を惹きつけ合う激戦市場です。2021年2月にGUCCIがTmall旗艦店をオープンさせた事を皮切りに、世界中から有名高級化粧品ブランドがTmallへの出展を開始しました。中国EC市場で戦うために芸能人の広告起用も一層高まり、Dior、YSL、Givenchyは、多くの芸能人と契約を交わしています。
海外高級化粧品ブランドが行うマーケティング手法
ブランドを確実に広める、人気バラエティ番組での商品広告宣伝手法
海外の化粧品ブランドは、人気バラエティ番組の影響力を積極的に活用しています。YSL、Estee Lauder、L’Orealは、今年人気のオーディション番組「創造營2021」と「青春有你3」のスポンサーとなり、番組放送中へ広告を入れる事や、番組に出場する練習生をブランドの配信へ招待する事などのプロモーション施策を行っていました。
年末のバーゲン・セール時期に合わせての芸能人ECライブ配信手法
L’Orealを始めとしたブランド達は、頻繁にECライブ配信へ芸能人を招いています。不完全統計※によると、2020年のW11※時、芸能人起用のECライブ配信施策を行ったブランドは、約40社にのぼります。これらは、海外ブランド達が中国越境EC市場へ本格的に乗り込む動きであると分析されています。また、「知瓜データ」によると、Lancômeの「群星闪耀巴黎狂欢夜」(番組)ライブ配信販売では、W11期間中における「芸能人によるライブ実演販売」の売上最高記録を作ったといいます。
※不完全統計:全てのデータが揃っていない暫定的な統計
※W11:11月11日独身の日に行われる、中国市場において大きなセールイベントW11(ダブルイレブン)
新興マーケティング・モデル「CP(カップリング)※」手法
CPマーケティングは、知名度を高めるための新しいマーケティング手法の1つとなりつつあります。2021年、人気ドラマ「山河令」にて人気を集めた二人の主演俳優張哲瀚と龚俊は、様々な化粧品ブランドから注目されました。アルマーニがファンデーションの広告に2人を起用しリリースした当日、Tmall旗艦店の販売売上が前年同期比で111%増加しました。(「数据威データ」より)
※CP:2人の間に芽生える友情や愛情などを含めた人間関係
海外高級化粧品ブランドが行っているマーケティング施策の実例
DIORの芸能人起用分析・ブランドイメージキャラクターをシリーズごとに起用する
DIORは、2021年度第1四半期に1億超のブランド声量※を獲得し、化粧品ブランドにおける声量ランキングのTOPとなりました。2020年6月に、DIORは、新世代のアイコン的存在の劉雨昕を公式イメージキャラクターに採用した事を発表し、何本ものプロモーションムービーを作成しました。WeiboのDIOR公式アカウントが獲得したブランド声量の半数以上は、劉雨昕に関わる内容でした。
※ブランド声量:ブランドに関連するコンテンツのエンゲージメント総数の事(いいね数+コメント数+リツイート数の合計)
海外ブランドの中でも”マーケティングの王様”と称されるL’Oréalの芸能人起用動向
有名海外ブランドL’Oréalは2020年上半期の、化粧品ジャンルにおける広告支出額ランキングにおいて1位になりました。2019年以降、25名以上の芸能人をイメージキャラクターに起用しており、ドラマで有名人となった俳優の多くがL’Oréalの広告起用芸能人に該当していました。また、L’Oréalはブランドの影響力を高めるために、SNSの公式アカウントで芸能人と頻繁にやり取りを行っています。
L’Oréal×朱一龍によるマーケティング施策の実例
①広告動画「时间雕刻师」(図左)
L’Oréalは、独自にプロデュースした「時間雕刻師2」という広告動画のショートムービーシリーズに、主演として朱一龍を起用しました。2020年8月31日にTmall旗艦店のライブ配信ルームにてプレミアショー予約を開始し、そのタイミングに合わせて話題発信を行った事で、延べ2億5,000万人に閲覧されました。ショートムービーの再生回数はweiboで358万回再生を突破しました。
②ライブ配信販売(図中央)
2020年のW11期間中、L’Oréal Tmall旗艦店のライブ配信ルームに、ブランドオフィシャルイメージキャラクター(名付けて“美礼专送官”)として朱一龍を出場させました。そのライブ配信は118万PV数を達成し、ライブでのGMV※は1725万元になりました。
③公益事業
2021年4月L’Oréalとそのイメージキャラクターである朱一龍は、WWF世界自然ファンド協会と連動し、「アジアゾウ保護」の公益目的事業プロジェクトを立ち上げました。” 欧莱雅紫熨斗空瓶计划”をキーワードに、公益関連の情報を発信していました。” 欧莱雅紫熨斗空瓶计划”に関する話題は延べ4億8千万人にリーチしました。
※GMV: Gross Merchandise Valueの略。消費者が購入した商品の売上の合計額、流通取引総額の事
まとめ
第1部に引き続き、中国の化粧品市場における芸能人起用プロモーションについての報告書をお届けしました。海外化粧品ブランドが、中国の化粧品市場で戦う為の販促プロモーションとして、芸能人起用を上手く利用していることが分かりました。また、新興プロモーション「CP」など、ターゲットとなる消費者の価値観に合わせた戦略が今後増えていく事も考えられます。
次回第3部では、中国現地の化粧品ブランドが行う芸能人マーケティングについて取り上げます。本記事の”海外化粧品ブランドの芸能人マーケティング”と比較し読んで頂ける記事となりますので、次回更新も是非ご覧ください。
ポリスターでは、中国現地スタッフによる市場ニーズに合わせた戦略立案をご提供しております。企業様のブランドイメージや商品価値を大切にし、日本スタッフ・中国スタッフが両国からサポート致します。日本にいながら中国進出をメーカー様主体で行っていく事が可能です。適切な芸能人プロモーションは勿論、企業様のご意向に合わせたプロモーション企画やマーケティング施策をご提案致します。
本記事が、中国でのマーケティング戦略の一助となる情報であれば幸いです。