2021.02.19
2020年の中国市場における、ライブコマース調査レポート
2020年は中国市場にとって「ライブコマース飛躍の年」と言って良い程の急成長を見せた。数字だけでなく、様々な方法で利用される多様化も見受けられ、まだまだ多くの可能性が潜んでいる。
そこで今回は2020年の中国市場でのライブコマースの振り返りと、これからの可能性を図や解説と共により詳しく紹介する。
※本記事のデータは、中国で有名な調査会社「CBN DATA」「TaobaoライブコマースON MAP」から一部を引用している。
ますます盛り上がるライブコマース市場
2020年はライブコマースの利用者が拡大し、市場規模が急成長した。
【図の説明翻訳】
2020年の年始に発生した新型コロナウィルス感染症の拡大による外出制限の影響から、ECショッピングやデリバリーの利用率が飛躍的に増え、ECビジネスが急成長した。中でも、目覚ましい急成長を遂げたのがライブコマースである。2020年の第二四半期(4月~6月)にはライブコマース配信者は約3億人に達し、前期比の成長率16.6%となった。
2020年のライブコマース業界市場規模は約1兆500億元(約16兆8000億円)に達する見通しで、2021年は約2兆元(約32兆円)まで成長すると予想される。
中国市場で販売展開をする場合、ライブコマースは必須の販売手法となっている。しかし、従来通りのライブコマースでは効果が微妙になってきているのも事実だ。2021年は商品の本質やターゲットの心理も考慮した、オリジナリティのあるライブコマースが求められる。
目次
2020年のライブコマーストレンド情報①ライブコマース配信者のアイドル化
人気の高い配信者たちはライブコマースの枠を飛び越え、人気アイドル化してきている。
【図の説明翻訳】
現在、ライブコマースで大人気の配信者「李佳琦」「薇娅」は2016年からライブコマースをスタートさせて、その後ブレークを果たし、遂には大スターへと上り詰めた。その他にも中国での大型イベントショーやバラエティー番組にも出演。ファッション雑誌やビジネス雑誌の表紙にも取り上げられるほどの人気ぶりを誇っている。
この現象は日本のYouTuberを想像してもらえれば分かりやすいだろう。彼らに商品の宣伝を依頼すれば、その影響力により売上向上の効果が見込める。しかし、彼らの宣伝サポート費は人気と比例して高騰している。2021年も大人気なライブコマース配信者の宣伝サポート費は益々高騰していくことだろう。また、人気の配信者を起用するだけでなく、「誰を起用することで、どんなブランドイメージを創りたいか」「全体的な戦略に合わせてどのタイミングでライブコマースを行うのが一番効果的か」などを見極めていく必要がある。その為、ライブコマースを含めて自社にとって最善の方法を考え、試行錯誤した先に良い結果が待っているだろう。
2020年のライブコマーストレンド情報②:有名人とのコラボによる売上増加
人気のライブコマース配信者たちは有名人ともコラボレーションを多く行い、その結果売上アップに大きく貢献している。
【図の説明翻訳】
人気の配信者たちは様々な分野の著名人とコラボして、ライブコマース配信の参加者を増加させ、購入意志決定の後押しを促している。人気ライブコマース配信者「薇娅」の場合は、「著名人とコラボ出演した回」が「通常の回」に比べて約1.3倍の売上となっている。 最近では人気女優「高圓圓」と人気ライブコマース配信者「李佳琦」と、某ブランドでの3者コラボを実施して効果を出している。「著名人×人気ライブコマース配信者」のコラボの広告効果は、「著名人×ブランド」よりも遥かに効果が出ているようだ。
最近はコラボするブランドも有名なブランドが増えてきている。また商品の単価も高騰しており、今までは日用品や化粧品、健康食品などが多かったが、自動車や不動産、なんとロケットまでもがライブコマースで売られるようになってきている。2021年は”モノ”だけでなく”コト”の販売にも注目されている。例えば、著名人から直接学べる券や食事が一緒にできる券などにも新たなニーズが出てきている。こうした需要にも注目していると日本製品の新たなヒットもまだまだ期待できる。
2020年のライブコマーストレンド情報③:農民やシニア層などの異色の業界人も参入!
ライブコマース配信者として農民やシニア層も参入し、ますます範囲が広がってきている。
【図の説明翻訳】
ライブコマースの多様化が進む中、最近は農民やシニア層の配信者も増えてきている。そのことにより農民やシニア層にもライブコマースを浸透させるべく、各プラットフォーム管理会社も積極的にサポートしている。
今後は中国市場の中で、農村部やシニア層の需要獲得が多くの企業の命題になっていく。その為にはまずは農村部やシニア層の調査が必須となってくる。中国市場ですでに広まっているだろうと思える製品にも、まだまだ需要が存在する可能性もある。これらの情報を的確に見定められることが、農村部やシニア層の需要獲得にもっとも重要になってくる。
2020年のライブコマーストレンド情報④:人工知能(AI)を利用したライブコマース配信者が急増中。
人工知能(AI)を利用したライブコマース配信者が急増し、それに伴って夜間でのライブコマース配信も増加している。
【図の説明翻訳】
2020年の下半期以降、人工知能(AI)を利用した配信者を起用して、ライブコマース市場に参入する企業が相次いでいる。AIを利用することにより夜間配信など、企業のスタッフが稼働できない空白時間も活用することができ、新たなニーズにも対応しているのだ。また人工知能(AI)を利用したライブコマース配信の効果は、全体のライブコマース売上向上にも貢献している。
ライブコマースの需要拡大が、人工知能(AI)活用まで広がっている。2021年は中国市場でもライブコマースも含めて、人工知能(AI)活用が更に広がっていくと予想される。その中で、指示をする人間がどのような方向性を示すかが重要になってくる。
2021年以降も、中国市場でライブコマースの需要は拡大していくだろう。それに加えてクオリティの高さも求められる。日本でも認知度が高いライブコマースだが、何も分からないままとにかく始めるのはお薦めしない。なぜならタイミングを見誤ると、ブランドイメージの毀損に繋がるようなことも起きる可能性があるからだ。従って、企業毎の中国市場での状況を踏まえて、ライブコマースを行うことが最も重要になる。自社の商品やブランドに合ったライブコマースを行ってほしい。その為にまずは中国市場の状況が分かるプロに相談することをお薦めする。