2020.10.23
ソーシャルコマースがもたらす中国市場の変化
ソーシャルコマースという言葉をご存知だろうか?
最近、中国で注目されているECでの販売方法である。中国では「SNS+EC」や「共同購入EC」と言われており、新たなEC販売方法として、中国EC業界でのシェアを伸ばしている。
ソーシャルコマースでキーワードとなるのが「人とのコミュニケーション」。今、ECの中でもユーザーは人とのコミュニケーションを求め始めている。
今回の記事では、中国でのソーシャルコマースの動向や中国市場への影響をお伝えする。
中国でのソーシャルコマースの動向
何故ソーシャルコマースが中国で今注目されているのか。
それはEC化が急激に進む中国では、大手ECモールの競争が日々激しさを増しており、クーポンの大量発行や大型セールの連発、商品の値引き合戦など、あらゆる方法でユーザーを取り合っている。その結果、各大手ECモールは宣伝費・販促費が膨らむ一方で商品の利益率は下がっていき、伸び悩み始めているのだ。
その状況を何とか解決しようと、ゲームや動画配信など、新たなコンテンツをECモール内に加えて行くことでユーザーを飽きさせることなく、自分たちのECモールに留まってもらおうと様々な戦略を試しているが、現状は大きな効果を得られていない。
従来のECモールは「物(商品)」を中心にして、どうやったら商品を多く売れるかという考え方だったが、ソーシャルコマースは「人(ユーザー)」に自分たちのECモールで多く買い物をしてくれるかという考え方だ。確かにゲームや動画配信など、目新しいだけのコンテンツを加えても、すぐに飽きられてしまいユーザーは離れていく。
そこで販売戦略の中で見直されたのが「人と人とのコミュニケーション」である。「コミュニケーション」は人間が本質的に求めるものであり、流行などで括るものではない。それに中国は口コミ文化と言われるほど、人と人とのつながりを大切にする。中国でSNSが日本以上に普及したのも、口コミ文化が大きく影響している。中国の口コミ文化を根底とした上で、商品を販売していこうというのがソーシャルコマースなのだ。
中国ではソーシャルコマースを「ソーシャルコンテンツコマース」「ソーシャルシェアコマース」のカテゴリに分けられている。
まず「ソーシャルコンテンツコマース」だが、SNSから商品を口コミで注目させて、購買につなげていく販売方法だ。ソーシャルコンテンツコマースの中で代表的なのはRED(小红书)。
REDは化粧品のSNSサイトとして、ユーザー同士で商品をレビューしたり、使用した体感を共有したりするサイトとして、若者を中心に有名になり、大きく成長していった。今では中国化粧品業界の検索エンジンとも言われている。
REDは日本人感覚で分かりやすく例えると「Instagram +Amazon」と言われており、SNS機能だけで無く、販売機能も整っているので、近年はRED内の口コミから多くのヒット商品を生み出している。
一方、「ソーシャルシェアコマース」はSNSで商品をシェアして、共同購入すると商品が割引されることを呼び掛けることで購買に繋げていく販売方法だ。ソーシャルシェアコマースの中で代表的なのは「Pinduoduo(拼多多)」。
ユーザーは中国の代表的SNSである「Wechat」「Weibo」などで商品をシェアして、共同購入する参加人数の条件をクリアしたら、参加者全員は通常価格から大幅に値引きされた価格で商品を買える。Pinduoduoはこのシステムで、中国でEC未開拓地域だった農村部など、多くユーザーを獲得して急成長していった。
これらの実績を見て、大手ECモールも黙って見ている訳ではなく、自社のECモールに積極的にソーシャルコマースを取り入れている。ただ「人と人とのコミュニケーション」が根底の販売方法なので、今までのようにシステム化が出来るものではない。日々成熟していくユーザーに対して、オンライン上で、どのようなコミュニケーションを表現するかがカギになる。
ソーシャルコマースが与える中国市場への影響
今までの記事でも紹介していたが、ECモールの商品ページ内で行うKOLやKOCを起用した「ライブコマース」や中国の代表的なSNS「Wechat」「Weibo」のプラットフォーム内での販売など、EC販売にコミュニケーションを組み合わせた方法は、続々と生まれている。
ただこれらは「物(商品)」をどうやったら多く売れるかという考え方のもと、新たな販売方法として捉えられていた。宣伝方法も、SNSを中心に中国の口コミ文化を意識したやり方は多数存在していたが、あくまでも商品を多く売るための宣伝という考え方が主流だった。
しかし今の中国市場は、それでは満足しなくなったユーザーが増えてきている。EC上で、飲食店などの実店舗のような、人の温もりを感じるコミュニケーションを求めている。まるでECの歴史に対して逆流しているような状況が、今の中国市場では求められ始めているのだ。こうした流れもあり、最近は中国EC業界の関係者によっては、これからは実店舗の時代と言っている人もいる。
ただ「人と人とのコミュニケーション」が目的の主になると、商品を売ることから遠ざかっていく可能性がある。日本でもそうだが、SNSでの日常の会話で、商品販売の話ばかりをする人は滅多にいないだろう。そんな人がいたら、その人は相手のことを無視した、ただの迷惑な人だ。
しかし、EC販売の最終目的が商品を売るというのは、これからも変わることは無い。では、どうすれば良いのだろうか?
やり方は色々とあるが、例えば「ファンを作る」というのも一つの方法だ。「ファンを作る」と聞くと、アイドルと追っかけファンなどの関係性を想像されると思うが、それを商品やメーカー様とユーザー間の関係性で作っていくのだ。それを構築していくには、人間同様に、商品やメーカー様にも個性を持たせなければいけない。
個性に魅了されているのがファンだ。そしてファンは積極的にコミュニケーションを取ろうとする。それがいつの間にか継続的なコミュニケーションへと繋がっていく。
そう聞くと会社や自社商品の個性は無いのではないかと思うかも知れないが、そんなことは無い。必ず良い点はある。それをじっくりと磨いていって、ブランドを構築していけば良いのだ。
それが「ブランディング」だ。
ブランドが構築できたら、ソーシャルコマースでも、どんな販売方法でも、中国市場で継続的に販売展開が出来るだろう。中国市場はこれからも次々と新たな販売方法が生まれるが、個性的な商品を探し続けることは絶対に変わらないから。
ポリスターが出来ること
ポリスターは事業内容の中でも「ブランディング」を最重要と考えている。
「ブランディング」と聞くとプロモーションを重視しているように思われるが、プロモーションだけでは「ブランディング」は構築できない。商品の内容やデザイン、商品名から始まり、販路開拓や商品管理・リスク管理まで全てを一貫して行わないと「ブランディング」は構築できない。
だからポリスターは中国市場で販売展開できる全てのインフラを整えている。それは急速に変化する中国市場で、最終的に重要になってくるのがブランド力だと考えているからだ。
日本市場では、既に「ブランディング」を取り入れている日本メーカー様も多いと思うが、中国市場も中国特有のブランディング方法がある。そのためにソーシャルコマースのような様々な販売方法も、ポリスターは積極的に取り入れている。何故ならそれも「ブランディング」の1つだから。
ポリスターは日本メーカー様の素晴らしいブランド力を中国市場に広めるために、販売展開の戦略を立案して、中国進出の成功を支援していく。